こんにちは,先日一週間くらいずーーーっと風邪引いてて実験等の正課がこれまでにないくらいオワリを迎えてしまいそうな状況にあるTsubokura(Twitter : @ukstbkrs)です.でも,咳のしすぎで血痰がでたら流石に実験休んでいいと思うんだ...

さて最近ジョン・フォン・ノイマンの著作に触れる機会がありまして(どんな機会だ???),今回のアドカレではその著作から面白かったところを適当に紹介することとします.

フォン・ノイマンといえばあの人しかいませんね.あまりに頭が良すぎて「火星人」とか「悪魔の頭脳」とか言われちゃってるこの人↓です.(USA君のアドカレに載ってましたね.)

John von Neumann(1903~1957)

そうです!タイトルの「温故知新」というのはフォン・ノイマンみたいな古典を読んでみたら面白かったから紹介するよーっていうことです.たまにはこういうのもいいですね.

今回読んでみたのは↓の本

「計算機と脳」

「自己増殖オートマトン」第一部(p.1~99)

「The General and Logical Theory of Automata」in Collected Works Vol.V (p.288~p.329)

また,関連する論文として↓を読みました.

「フォン・ノイマンと“自己”の問題」

読んで面白かったなーと思ったところは次の2点です.

1.オートマトンがそう複雑でないあいだはオートマトン自身よりもその機能の記述の方が簡単であることを示す事実が多数ある.しかし,高度に複雑になると,実際の対象物の方が,言語による記述より単純になる(“自己増殖オートマトンの理論”p57)

2.数学の言語,脳の言語について(“計算機と頭脳”p113)

詳しくみていきましょう!

まず,1.について.オートマトンとは「ある規則に基づいて,状態を遷移する機構」のことで,主に計算機やロボットなどを対象として用いられる用語なんですけど(「計算機科学入門」みたいな講義で扱われた記憶がします),「自然オートマトン」として生物や人間を指して使用されることもあって,ここでは両方を指して言っているんだと思います.ノイマンは,人間の思考や脳といった高度に複雑なものからコンピュータへの開発に繋がる知見を得ようとする際,「人間の思考や脳はどう動いているのか?」や「脳の振る舞いは,要素のどのような働きによって実現されているのか?」を考えるんじゃなくて,「人間の思考や脳の振る舞いのみを対象とする」ことでそれを実行可能にしたわけです!いわば,一種のブラックボックス化ですね.実際,ノイマンも

We assume that the elements have certain well-defined outside, functional characteristics; that is, they are to be treated as “black boxes”(“The General and Logical Theory of Automata” p289)

また,

We may investigate the larger organisms …, the connections between the elements, and the general theoretical regularities…(同上p289, 290)

と言っています.「ブラックボックスとみなせば色々わかることもあるぜー!」ってことですね.私たちは物事を見たらすぐその中身を考えがちですが,あえて中身の仕組みを無視することによって何かを引き出そうとしたのはさすがだと思います.

2.について.「計算機と脳」の中で,ノイマンは,「私たちが数学を語るときには,中枢神経系が現に用いている“一次”言語の上に構築された“二次”言語について語っているのかも知れない」(p114)と語っています.…そうです!「脳をコンピュータとして見立てた」とき,数学や論理学,他の諸言語(私たちが普段使っている言葉だけでなく,もっと色々な意味で)をいわば「高級言語」,脳の中枢神経系で使われている(だろう)言語は,「高級言語」と隔絶されたいわば「機械語」とみなせる,というわけです!

そう考えてみれば納得できることも多いですよね.私たちは普段「高級言語」のみを使っているので,脳の仕組み,つまり「機械語」がよくわかんないのも当然といえます.

「計算機と脳」には他にも,例えば人間の記憶容量の概算や脳の「素子」とコンピュータの「素子」一個ずつの熱効率を比較していたりなど面白い部分も多かったのですが,2.が一番興味深かったです.

また,今のいわゆる「長期記憶,短期記憶」...とかに代表されるようなよく知られている脳のモデルは,実はノイマン型コンピュータの仕組みを基にして考えられているんです.

そう言った視点で両者を比較してみるのもまた面白いかも知れません.

普段私たちが当たり前に使っているコンピュータですが,ノイマンのようにその仕組みを考え出した人がいたからこそ私たちが使えているわけです.たまには,そのような人たちの考えてたことを調べて温故知新してみてはいかがでしょうか.

参考文献

ジョン・フォン・ノイマン (1975)  「自己増殖オートマトンの理論」,高橋秀俊訳,岩波書店.(2011)「計算機と脳」,柴田裕之,ちくま学芸文庫.

John von Neumman(1951)「The General and Logical Theory of Automata」in Collected Works Vol.Ⅴ

大西啄朗(2007)「フォン・ノイマンと“自己”の問題-セルラー・モデルと自己複製-」 大西琢朗,京都大学大学院文学研究科哲学研究室.

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