VRHMDとは
Facebookが買収したOculus(図1)やSonyのProjectMorpheus(図2)といったVR
HMDが注目されています.VRHMDのVRはバーチャルリアリティ,HMDはヘッドマウントディスプレイの略です.高精細なディスプレイとレンズ,頭の動きを感知するジャイロセンサーが
一つになったもので,頭の動きと映像を連動させて,あたかも仮想世界に入り込んだかのように錯覚させることが出来る装置です.最新版のOculusでは,利用者の前にカメラを配置しヘッドセットの位置を知ることで,空間の中のどこにいるかを分かるようにする技術を導入しました.これにより,例えば,しゃがみ込んで上を見上げることで,スカートの中を覗き見るといったことを仮想世界で体験できるようになります.カメラでのトラッキングはSonyもPlaystationCameraを使って対応予定ですが,スカートの中の覗き見に対応するかはまだ分かっていません.

仮想世界をどうやってプレイするか
仮想世界に対してプレイヤーがどうやって働きかけるかという問題は,仮想現実のリアリティを左右するとても大切な問題です.従来型のゲームコントローラーは,ゲームをプレイするごく当たり前の方法でしたが,仮想世界ではどうでしょうか?.熟練ゲーマーは問題ありませんが,仮想世界ではコントローラーのボタンを目で見て確認することができないため,ライトユーザーは操作に戸惑う可能性があります.この問題に対して,Sonyは強みがあります.PS4のPlaystationCameraを使うことでSonyはヘッドセットの位置だけでなく,ゲームコントローラーの位置も分かるのです.ボタンが沢山ついた従来型のゲームコントローラー(図3)と棒状のモーションコントローラー(図4)のいずれもカメラでトラッキングできるため,直感的操作とボタン操作の両方を利用して操作性を向上させることが出来そうです.Oculusはまだ公式のコントローラーを提供していませんし,標準的なものもありません.

仮想世界を歩く方法
従来型のゲームコントローラーは,別の理由でリアリティを損なうのではないかという指摘があります.例えば,ゲームコントローラーでは,歩くという動作を,スティックを前に倒すことで実現します.実際に歩くほうがリアリティがありますが,現実世界の空間は限られているため本物の壁にぶつかるという事態が発生します.こういった空間的制約を解決する方法が研究されています.CyberwalkとYoutubeで検索すると,X,Y方向の両方に対応したルームランナーマシンのような装置の動画が出てきます(図5).6年程前の動画が多く,仮想現実に関連する研究が古くからなされてきたことがうかがえます.Omni(オムニ)はクラウドファウンディングで資金調達に成功したベンチャー企業の,ベイブレードのステージを大きくしたような台と,センサ付きの底が硬い靴の2つで構成される装置です(図6).モーターといった動力があるわけではなく,ステージが中心に向かって傾いているため,足を踏み込むと滑って真
ん中に戻るという仕組みで擬似的な歩行を実現します.それを靴のセンサが読み取ってどれだけ歩いたかを計測します.機構が単純なためコストが低く,(比較的)場所を取らないため,期待されています.OmniはOculusで使うことが出来ます.ゲームでどれだけ歩きたいかと問われば,疲れるし,ゲームコントローラーのスティック傾ける方が楽なので,必要ないと思われる方も多いかもしれません.ただ,Oculusを非ゲームメーカーのFacebookが買収したように,VRHMDは単なるゲームガジェットに留まらない様々な可能性を持った技術です.どのように進歩して活用されるのか,今後も目が離せません.

筆者:asakura

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